手術体験アプリ(患者さん用)を作ってみたらどうだろう
正直、手術って、ドラマの中の世界であって、自分自身が手術を受けることなんて夢にも思っていない、
なんて人が大半なんじゃないかと思います。
実際に私が外来で診察しているときも、健診で便潜血陽性だったので詳しく調べてみたら大腸癌が見つかり、
「今まで健康で、入院もしたことがなかったのに…」
と驚いていらっしゃる方が多いです。
そこで初めて、ドラマの中でしか見たことがない「手術」を自分自身が体験することになるのです。
この未知の体験、不安や恐怖が大きいんじゃないかと思います。
そこで、病院では、主治医から説明するのみでなく、パンフレットやホームページでの説明を加えて、なるべくわかりやすくなるよう工夫をしています。
ただ、例えば癌の告知をされ、まだ動揺している時期に細かく説明しても、正直頭に入ってこなかったりします。
落ち着いたところで、繰り返し説明内容に触れることで、徐々に自分の状況を受け入れ、説明内容を理解していくのではないかと思います。
では、患者さんがより具体的に入院生活の流れや注意点を理解するためにはどうすればよいか。
もちろん既存のパンフレットやホームページの説明は患者さん本人だけでなく、ご家族とも情報を共有できる点で優れていると思います。
それに加え、病院の雰囲気やリアルな入院の疑似体験を、事前に体験できればより一層理解が深まり、安心にもつながるのではないかと考えました。
ここから先は、タイトルにもある、患者さん用の「手術体験アプリ」があったらどうかな、という話です。
まだそのようなアプリを導入している施設の話は聞いていないので、私の未来予想になります。
昨今のアプリは完成度が高く、加えてアプリ作成ツールも充実しているので、参入へのハードルが下がっているのではないでしょうか。
また、AR(Augmented Reality 拡張現実)や、VR(Virtual Reality 仮想現実)といった技術が進歩しています。
これらを組み合わせて、入院から退院まで、どのような生活になるのかリアルに体験できれば、具体的に入院生活を理解できるのではないかと。
入院前にアプリを導入していただき、VRゴーグルを装着して説明を受けます。(VRゴーグルじゃなくてもいいか?)
例えば、入院してから入院時の検査をし、手術を説明を受けます。
この説明も図や、できればご本人の大腸カメラの画像を用いればわかりやすい。
AIを使って、検査データや画像の中で重要なところを自動的にピックアップして説明に盛り込めたら凄いな。
そして手術当日。
朝8:30に病棟を出発して、手術室に入るところまで忠実に再現。
手術前に麻酔をしますが、硬膜外麻酔(背中に鎮痛薬を注入する細い管を入れる)を併用するのであれば、それも再現。
全身麻酔で寝たところまで体験したら、手術の手順を動画で説明し、麻酔から目を覚ます。
病室に戻ったら体にモニターをつけるところもあるとリアルか。
手術翌日には朝採血をしたら日中リハビリのスタッフが訪室して動ける範囲でリハビリ開始。
その内容も具体的に説明できれば、「このくらい動ければ良さそうだな」と理解してもらえるのでは。
その翌朝からはどんな感じの食事がでるのか、検査は何時ごろに何をやるのか。
そんなところも説明できるのでは。
ドレーン(お腹の中に入れておく管)がいつ頃抜けて(抜けるときも再現するか)、いつ頃、どのような状態になったら退院できるのか、
そこまで理解できれば大分いいのではないでしょうか。
また、途中で合併症が発生したときの流れなども、「合併症発生バージョン」で治療の流れが説明されていれば安心につながるのでは。
実際に作ってみたら、こんなところも質問が多いから加えてみたら、なんてこともあるのではないかな。
アプリを作る側としては、各病院でゼロから作るのは大変ですよね…
アプリ作成業者さんでテンプレートを作成し、それぞれの病院で自施設の画像を取り入れているといいのでは。
実際、施設によって「クリティカルパス」といって、時間軸に沿ってまとめた治療計画書が異なることもあるので、適宜アレンジできる形にしておくと汎用性が高いと思います。
ロボットや内視鏡手術、カテーテル手術など、治療方法が進歩していき、表面の創からはどんな治療が行われているのか想像しにくい時代、
説明方法も進歩することでよりよい患者体験ができるのでは、と考え提案してみました。
まあ、将来的には手術を受けなければならない状況になる前に病気が見つかって、治癒できるようになるのが理想ですけどね。