「Cureus」に論文投稿【無料かつインパクトファクターの付いた謎のジャーナル、査読の裏側も紹介】
「Cureus」という医学ジャーナルを御存じでしょうか。
論文掲載料が無料でアクセプト率が50%程度と高く、かつ2023年にインパクトファクターを獲得しました。
PubMedにも掲載されています。
英語の論文を投稿してみたいが、他のジャーナルのコンセプトに合っていない…とお悩みのあなたにピッタリかもしれません。
症例報告も受け付けていて、何でもござれ状態。
3か所にrejectさせて傷心していた私も息を吹く返すほどです。
ということで、早速Cureusへ投稿してみましたので、その過程を紹介します。
まずはCureusの投稿サイトへ。
Author Instructionsを読んだら作業を開始しましょう。
Competition
Channel
Collection
Article Type
の各項目を選択し、
Title
Abstract
Categories
Keywords
を記載していきます。
あらかじめ文章を作っておけば、コピペで完了です。
Abstractは3,500字以内です。
続いて、
Authors
Disclosures
Article
References
Reviewers
Summary
Submit
の各項目を記載していきます。
倫理委員会の承認番号だけでなく、「承認が確認できる記載」が必要です。
私は自分で院長から自分宛の英文レターを作成し、院長からサインを頂きました。(自作自演…)
Artticleは、
Introduction
Case Presentation
Discussion
Conclusions
Appendices
の各項目からなり、それぞれ記載すれば完成です。
Referencesは面白く、自分で適当なフォーマットで作ったものを投げ入れると、自動的に番号、ジャーナル、タイトルなどに振り分けてくれるので簡単です。その後適宜調整します。
Reviewerは少なくとも5人、自分で招待する必要があります。
知り合いにあらかじめ伝えておいて、メールアドレスから招待します。(自施設の医師も可)
出来上がりを確認して、問題なければ投稿です。
使いやすいサイトという印象でした。
さて、投稿内容に問題がなければそのまま査読に入りますが、Conclusionが短い、Introduntion が短い…といったご指摘を受けた場合は適宜修正して再投稿します。
私は2往復した後に「Preferred Editing service 」を受けないと次のステップに進めませんよ、というメールが来ました。
その額は$260。
掲載費無料とはいえ、ばっちり決まっている原稿でないと費用はかかります。
とはいえ、Gold Open Accessで$1,000以上かかるよりは良いか。
Cureusのホームページによると、「Preferred Editing service 」は平均で$340かかるとのこと。
校正にかかる費用を確認することもできます。
Primary affiliation country: 日本など
Type of article: Original, Review, Case report, Technical report, Editorialより選択
Reference count: 引用文献数
Word count: 0-1500, 1501-2500, ・・・から選択
Author count: 著者数
Article errors: Level 1~5 から選択(これは自分ではよくわからない…)
を記入すると概算が出ます。
ということで、円安の中、Preferred Editing serviceなるものを依頼しました。
それから数時間後、査読へ進んだとのメールが来ました。
(随分早いな、$260で何をいじったんだ?)
ということで、査読結果を持つこととします。
果たして無事にアクセプトされるのでしょうか…
1週間経過し、minor revisionとの連絡が。
レビュワーの指摘は明確で好意的な印象です。
適宜修正してeditageに英文再校正を依頼したのち、再度submit。
今度は2日でレビュー完了し、accept!(早っ)
レビュワー招待者一覧が明記されており、合計十数名にレビュー依頼し、3人がレビューしてくれたようです。
最終チェックをして承認したら、翌日publishされました。(早すぎて笑う)
PubMed Central (PMC)に適応されるまで1か月ほどかかるが、ちょっと払えばスキップできるオプションもある模様。(華麗にスルー)
ということで、記念すべき初回の投稿はsubmitからpublishまで21日という爆速で完了しました。
査読は?
さて、当院では他科でもCureusに注目している先生がおりました。
症例報告を提出するにあたり、レビュー依頼が来ました。
レビュワー体験スタートです。
まずは著者と論文のアブストラクトを含んだメールが届くので、レビューをアクセプトします。
レビューはrejectをベースにせずacceptに結びつくためのコメントを書くこと、英語のスペルや文法ミスの指摘に終始しないこと、論理構成で修正や補足が必要な点を指摘すること、などの注意事項が書いてあります。
レビュワーとして何が求められているか明確であり、かつ建設的なコンセプトである印象を受けます。
サイト上で論文本文が表示されるので、各文章に直接コメントを付け加えていく形式でした。
他のジャーナルのようにレビュワーレターのようなものを書くことはありません。
コメントを加え終えたら提出します。
続く画面では、論文の主旨や新規性が明確に説明されるようにコメントしたか、挿入される図やグラフが適切か、などの質問文に適宜回答していき、提出します。
これでレビュー完了。
こちらの論文、それから1週間ほどでアクセプトされました。おめでとうございます。
同時に、筆頭著者からレビュワーが評価され、Reviewer Ratingなるもので満点の星5ついただきました。ありがとうございます。
Cureus Journal of Medical ScienceからPeer Review Certificateが発行され、晴れてレビュワーの仲間入りを果たしたのでした。
「Cureus」は論文投稿もレビューも操作が分かりやすいジャーナルでした。
2024年時点でのデータとして、
Accept rate: 51%
Submission to Publication Time: 33 days
Accepted Article Published for Free: 31%
5-Year Journal Impact Factor: 1.2
2-Year Journal Impact Factor: 1.2
とのこと。
各診療科の領域は一通りカバーされているようです。
投稿先として良い選択肢になりそうですね。
これで論文掲載料タダ(7割ほどで「Preferred Editing service 」という費用がかかる)で、投稿から掲載まで33日、インパクトファクター1.2、ありです。
気軽に投稿できて凄く良い。
インパクトファクター1以下で論文掲載料とっているジャーナルは淘汰されるんじゃないかな…
ここまで読んで、英語で医学論文を書いたことがなかった方で興味を持たれた方もいるのではないでしょうか。
初めて書いてみる方のために、準備することや書き方、統計処理、投稿先ジャーナルの検索方法を説明しているので、コチラから参照して頂けますと幸いです。
以下アフィリンクにて個人的なオススメをご紹介↓
症例報告では「論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ」、
臨床研究では「外科系医師のための手術に役立つ臨床研究」という本です。
論文を書けるという自信が沸いてきます。