現役外科医が語る:医者は激務?労働時間や給料、プライベートは?【研修医編】
「医者」と聞いてどんなイメージを抱くでしょうか。
「命を扱う大切な仕事」、「儲かりそう」、「仕事が忙しそう…」など、様々な意見があるのではないかと思います。
私自身医師になってまず感じたことは激務であることです。
高い志や大きな目標を持って医者を目指す方は多いと思いますが、その道のりは険しいことを覚悟してもらわなければいけません。
また、医者との結婚を考えている方はイメージとは異なるかもしれない現実を知っておいて損はないでしょう。
もちろん、所属する病院や診療科によって仕事内容は大きくことなるので一概には言えません。
私は大学病院の医局には所属せず、医者1-2年目を初期研修医、3-6年目を後期研修医(今は専修医と呼ばれている)として大病院で勤務し、その後中規模病院や大病院で働いています。
大学医局に所属しているかどうかでも状況は変わりますが、市中病院の勤務医が研修医時代どのような経験をしてきたか参考にしていただければと思います。
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研修医(専修医)時代は身体・精神の限界と闘い、得るものは多い
医者になって初めの2週間はオリエンテーションで施設の説明や同期とのコミュニケーションをとるための「のほほん」とした時を過ごしました。
そして翌週、初めて病棟で勤務を開始し、医者っぽく振る舞うことになります。
採血や点滴の針を入れたり、検査や薬のオーダーも、そもそも電子カルテの使い方がわからない・・といった状態で放り出され、サバイバルが始まります。
わからなさ過ぎて仕事が進まないので、誰だか知らないけど医師のネームプレートを付けている人を発見したら片っ端から聞いて、一つ一つ課題クリアしていきます。
治療方針をどうするか、大学の教科書では具体的なことが書いていないので歯が立たず、臨床向けの本を参考にしながら日々勉強、治療、勉強、治療を繰り返します。
わからないことは上級医に相談するのですが、上級医もまた激務で21時になってやっと手が空く状態。
申し訳ないと思いながら夜中に時間を取っていただきました。
サバイバルをしながら勉強し、上級医の素晴らしい説明を頂くことで様々な知識・技術を身に着け、大きく成長できたと思います。
夜は0時に帰れればいいのですが、ここからが正念場で、明日からの処方が足りないとのことで1時に呼び出し、点滴が取れないとのことで2時に呼び出し、患者さんが転倒したとのことで3時に呼び出し、採血ができないとのことで6時に呼び出されるので寝ようにも寝られない日々が連日続きます。
体育会系の部活に所属していたので体力には自信がありましたが、寝られない疲れは一味違います。
研修中に発熱・嘔吐を発症しましたが、出勤停止命令の範囲外であったので点滴をしながら勤務したことが懐かしく感じられます。
そんな中、精神的にも疲弊して、何気なく上級医に仕事辛くないですか?と聞いたら、
「患者さんの方が大変だからね」
とさらっと仰ったのが印象的で鼓舞され、今でも思い出します。
昼夜問わずに呼び出しがかかり続け、いつ仕事が終わったのか、いつ日付が変わったのかも分からなくなってきたころに、「帰宅と同時に飲酒」生活が始まったのです。
酒が入ると次第に疲れがふわっと感じにくくなってリラックスでき、「仕事一段落感」を味わえる、そこに魅力的を感じたのが「アル研」の原点でした。
以上が医者1-2年目の初期研修医時代です。
最近は働き方改革のため特に初期研修医の勤務に対して厳しい指導が入るようになりました。
基本的に17時に帰り、呼び出しはなし。QOL高い。
なのでかつての状況とは大きく異なるかもしれません。
学ぶ機会が減ってしまうのではないか、という意見もありますが、深夜むやみに呼び出されないことの恩恵は壮大で、温存された体力で勉強した方が効率がいいと思います。
最近研修に来ている初期研修医もよく勉強していて鋭い質問をしてくれるので嬉しいです。
さて、消化器外科医として後期研修(今の専修医)が始まります。
初めはそもそも技術がないので簡単な手術のみ執刀します。
とはいえ当直では厳しめの症例を紹介され、専門医として対応しなければいけない現実と自分の実力の圧倒的な差に困惑し、猛勉強・猛練習の日々が始まります。
この医者3年目辺りは特に辛い時期なのではないかと思います。
働き方改革も初期研修医以外には手が及んでいない印象で、17時帰りが染みついている方にはなおさら酷ではないでしょうか。
病棟管理は担当医制という形で、昼夜問わず担当患者さんに関するトラブルは全て担当医が対応することになっていました。
寝ていても電話に出た瞬間から仕事モードに切り替えなくてはいけないストレスは非常に大きく、これが生涯つづくのか・・なんて思ったりしました。
これは今でもそうですが、夜中に緊急手術が始まり早朝終わって、その朝からまた予定手術が始まるのです。
24時間中18時間手術は結構経験するイベントでしたが、正直体力的にしんどい。
ある程度は慣れますが、歩いていたはずが壁にもたれて寝ていたり…
夜中に病院をウロウロすると、かつての同期が内科医になって亡霊のような風貌でウロウロしているので、どこも似たり寄ったりだなと。
内科は内科で研究・論文に費やすエネルギーが大きく大変とのことでした。
冗談抜きで過労死するのでは、と思いましたが、生き延びました。
次第に大きな手術の執刀をするようになると、様々な知識・技術がつながってくるように感じられ、医学の面白さに気が付きます。
やりがいを感じられるようになると、自発的に次のステップを目指していけるようになります。
辛かったけど良い流れに乗ることができたように感じています。
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給料は?(あまり聞いてはいけません)
初期研修時代は月収30-35万円です。
全国平均くらいかと思いますが、病院によって当直代や救急日直代、残業代が追加されるところもあります。
私は当直も救急も残業も全て込みの固定月収だったので毎月同じです。
それでいて激務。
(周りは止めたのですが)同期の研修医が時給計算をしたところ、最低賃金の半分以下で落ち込みました…
後期研修医になると1.5-2倍になり、学年を経るごとに少しずつ昇給しました。
同じところで同じように暮らしていた(使う時間はあまりない)ので貯金されるスピードがグッと上がりました。
僅かながら当直代が発生したため月に5万円ほど変動がありました。
全国的には医師3年目からの給料は診療科によっても大きく異なるため、もっと裕福な暮らしをされている方も多いと思います。
最近になって本来残業代は支払われなければいけないことを知り、給与面でどうだったのかな・・
なんて思ったりして今の研修医には「マネーリテラシーも大事だぞ」と意識高い系の啓蒙活動をしています。
ちなみに、年代別の医師の平均年収などがメディゲートのホームページに載っていたので参照してみてください。
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モテる?
個人的な印象だけでお伝えします。
まず、初期研修の初めのころは余裕がありません。
仕事を覚えてきてようやく動きが出てきます。
初めのうちは「イケメン、コミュニケーション能力が高い」層がモテ始めます。
しかし、2年目くらいになると「仕事の実力、他職種への対応」といった要素が加わり、モテる層に変化が起きます。
さらに3年目になると専門科に配属され、実力が相対的に下がるので一旦落ち込みますが、4,5年目にかけて実力がつくと同時に人気が出てくる印象です。
よって、最強なのは「イケメン、コミュ力高い、実力があって人当たりが良い」ということになりますが、イケメンでなくとも努力次第で何とかなる点がいいところかと。
モチベーションの上げ方は人それぞれでいいと思います。
ちなみに女性医師はというと、モテる方は入職した瞬間からモテます。
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仕事終わりは?
院内で夕飯を済ませて手術の予習・復習や専門医試験の勉強をしています。
仕事が終わらないときは夕飯をあきらめることもありました。
夜中になると集中力が切れてきて、そろそろ飲みに行くか、となります。
空腹具合によって飲み屋を選んでいましたが、家飲みも結構充実して楽しかったです。
たまに多職種も合流するような仲の良い職場だったのかな。
アルコール研究の成果を発表する場もこんなところから始まりました。
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結論
医者は研修時代に激務を経験することがあります。
しかし、現実として全国にこれだけ多くの、個性豊かな医師がいるので、志を高く持ち努力を続ければ医師としてやっていけます。
その過程で激烈にしんどい時期があるかもしれないので踏ん張りどころです。
日直、当直、日直を連続して勤務するサラリーマンは少ないので医療に携わらない方には理解されにくいところがあるかもしれませんが、世の中そんな人もいるんだ、程度にとらえていただければ幸いです。
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